財布

2015-06-05
Column

15年程愛用して来た二つ折りの革財布とお別れをした。

当初は職人さんの手で丁寧に作られた若々しい茶色だったものが、15年の時を経て、お世辞にも「風味」とは言えない程にボロボロの焦げ茶色に変わり、頑丈だったその止め金は、緩み、小銭がこぼれ落ちる程に役に立たなくなっていた。

それでも大切に使い続けていたのには、ある思いがあった。

その財布はある親友と共に購入したものだったのだけど、その親友は、10年前にサヨナラも無しにこの世を去ってしまって、それ以後は何となく彼の形見の様に感じて使っていたのだ。

それが先日、何気にズボンから取り出した時に真っ二つに破れてしまったから、思わず「あ~ッ」と叫んでしまったのだけど、不思議と同時に、彼が笑顔で「今まで有難うな」と言ってくれた様な気がして、約束を果たした時の様な、何か晴れやかな気持ちに包まれた。

モノには思いが宿る。

モノを大切にする事はとても大事だと思う。

でも、モノに「形」が必要な訳ではない。

今はそんな風に思える。