曲の雰囲気とアレンジ

Column

最近、ポップスやダンスミュージックを演奏する機会が増えた。

基本的にオリジナルが大切にされる事が多く、お約束のフレーズや音色など、その曲の持つ雰囲気やアレンジをどこまで再現出来るか、という楽しみがある。

一方、私が普段演奏しているジャズにおいては、プレイヤーの音楽的知識とその場のフィーリングによって曲の雰囲気やアレンジが即興的に変えられる事が良くある。

ジャズミュージシャンがポップスやロック、はたまた演歌など、普段接する事の少ないジャンルの曲を演奏する場合、全く違った側面や面白さが浮き彫りになる事も有れば、トンチンカンな結果に終わる事も有る。

今回、The Beatlesの名曲「Let It Be」をお題に、架空の現場において、ジャズピアニストがどの様な心境で雰囲気とアレンジを変えてイントロを弾くか、いくつか例をあげてみようと思う。

ちなみにジャズで使われる譜面はこんな感じで、メロディーと和音を表すコードネーム、後はテンポやリズムの種類(これらは省略される事もある)の表記と、いたってシンプル。

では、第1の現場へ

今日は普段ポップスを歌っている男性シンガーとのデュオの現場。

たまたま私はこの曲を知っており、共演のシンガーさんは黒の丸いサングラスをかけている。「ジョンレノンが好きなのかな?これは原曲に近い雰囲気で弾いた方が良さそうだな‥」と弾いたイントロ。

ところが、イントロを弾き終えるとシンガーから「普段と違う雰囲気で歌ってみたいんだよなぁ」とストップ(私がジャズピアニストと知って演奏をオファーしてきたのだから普段通りで良いか‥)。その後に弾き直したイントロ。

第2の現場

とあるボサノバユニットにて、夏祭りのイベントでの演奏。途中、酔っ払ったお客さんから「ビートルズの曲、なんかやってよー!」とリクエスト。メンバーと相談した所「Let It Beなら知ってる」という事になり、ピアノで弾き始めたイントロ。

第3の現場

ホテルのラウンジで演奏中、従業員からメモ紙が届く。見ると「ディズニー映画のLet It Be」と書いてある。(「アナと雪の女王」のLet It Goか「ビートルズ」のLet It Be、どっちやねん!)と迷いながらも、Let It Goはうろ覚えなので、とりあえず知っているLet It Beを弾く事にした時のイントロ。

第4の現場

サックスカルテットにてライブハウスでの演奏。豪快にブロウするタイプのサックス奏者。「今日はお客さんノリノリだし、ラスト曲は皆が知ってそうな曲が良いよねー。えーと、Let It Beとかどう?OK?じゃ、ピアノからイントロお願いね!」と言われた時のイントロ。

 

等々、状況に応じて色々なイントロが生まれる(上記の例はフィクションであり、経験談では無い事をご理解頂きたい)。

次に貴方が演奏会場に足を運んだ時、このコラムを思い出し、演奏しているミュージシャンの思考回路を想像をする事でライブを見る楽しみが増えてくれたなら嬉しく思う。